子作り(妊活)中の夫婦にミノキシジル使用の影響(副作用)はあるのか?

掲載日:2020.03.26 更新日:2020.03.27

この記事の監修 アンファー株式会社

子作り(妊活)中の夫婦にとって、ミノキシジル使用による子作りへの影響(副作用)は強い関心があるはず。発毛効果が期待されるAGA(男性型脱毛症)治療のミノキシジル外用薬は、投薬が長期間にわたるだけに、副作用も心配です。男性だけでなく、女性への影響も含めて、正しい知識を解説します。

目次

子作り(妊活)中のミノキシジル使用の副作用リスク

子作り(妊活)中の夫婦に対して、AGA(男性型脱毛症)治療のミノキシジル外用薬の副作用はないでしょうか? ミノキシジルやフィナステリド使用による子作りへの影響(副作用)について、男性だけでなく、女性への影響も含めて、正しい知識を解説します。

このコラムのポイント

  • 子作りに発毛効果のあるミノキシジルの副作用や影響は出るのか?その真相は?
  • ミノキシジルの子作りへの影響(副作用)の話の前/ミノキシジルの発毛効果について
  • ミノキシジルの子作りへの影響の話の前に/ミノキシジルの副作用について
  • ミノキシジル使用中の男性の子作りへの影響(副作用)について
  • 子作り(妊活)中・妊娠中や授乳期の女性はミノキシジルを使用しない方がよい
  • 子作り(妊活)中の夫婦にとってミノキシジル以上に注意が必要な育毛剤フィナステリド

発毛効果があるミノキシジルの副作用で子作りに影響が出るのか?その真相は?

AGA(男性型脱毛症)治療薬として注目されているミノキシジル外用薬は、その発毛効果が医学的に証明されています。しかし、投薬が長期間にわたるだけに、副作用のことも心配になります。ミノキシジル投与のメリットとデメリットをきちんと理解したうえで、正しく使用することが大切です。

ところで、AGA(男性型脱毛症)に遺伝的要因が大きく関与していることは広く知られています。そのため、AGA(男性型脱毛症)家系に生まれた方は、AGA(男性型脱毛症)を発症する前やごく初期、つまり比較的若いころからミノキシジルの投与を開始する場合も少なくないでしょう。ミノキシジルには発毛(新しく毛髪を生やす)効果だけでなく、育毛(いま生えている毛髪を元気にする)効果もあるため、この使い方は間違っていません。

しかし、それが子作りを考えた、いわゆる妊活中の場合、ミノキシジルによる副作用はないのでしょうか?

ミノキシジル使用による子作りへの影響について、男性だけでなく、女性への影響も含めて、正しい知識を理解していきましょう。

ミノキシジルの子作りへの影響(副作用)の話の前に/ミノキシジルの発毛効果について

発毛剤・育毛剤として注目を集めている「ミノキシジル」。これは、現在、発毛剤としては国内のOTC医薬品の中で唯一認可されている成分の名称です。

ミノキシジルは日本皮膚科学会も推奨している

日本皮膚科学会は、脱毛症治療に関するガイドライン「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版(※1)」で、「ミノキシジル外用」は最も評価の高い「推奨度A:行うよう強く勧める」に分類しています。つまり、AGA(男性型脱毛症)の治療に、ミノキシジルを外用薬(塗り薬)として用いることを、強く勧めているのです。

ミノキシジルの作用機序

ではミノキシジルには、具体的にどのような効果があるのでしょうか。

ミノキシジル5%製剤(塗り薬)を長期投与した結果を、医師が「著明改善」「中等度改善」「軽度改善」「不変」「悪化」の5段階で評価した臨床データによると、24週間以降は、「軽度改善」よりも「中等度改善」の割合が高くなり、40週間後には「著明改善」「中等度改善」「軽度改善」あわせて97.9%の被験者に効果がありました。

つまり、長く継続的に投与することで、より高い改善度が期待できるということですね。

この効果は、外用薬(塗り薬)のミノキシジル、通称「塗りミノ」についてのデータです。

ミノキシジル内服薬(ミノタブ)について

ミノキシジルには内服薬(飲み薬)タイプもあり、こちらはミノキシジル・タブレット(錠剤)を略して「ミノタブ」とも呼ばれています。

では、その「ミノタブ(内服薬)」の発毛・育毛効果のほどは?

ミノキシジルは高血圧症の治療薬(経口降圧剤)として開発されたもので、その後、発毛・育毛効果があることがわかり、外用発毛剤(塗り薬)が開発されました。現在でも、内服ミノキシジルは、米国などの海外でも高血圧症の治療剤(降圧剤)として使用されています。

ミノキシジルの購入方法について

ミノキシジルの外用薬は薬局ドラッグストアで購入できる一般用医薬品ですが、ミノキシジルの内服薬はそういった販売方法ではなく、頭髪治療専門クリニックなどで処方してもらうのが一般的です。

内服薬も外用薬も、発毛効果が高いため人気の治療薬ですが、いずれも副作用の報告があるため、医師や薬剤師の指導を受けて使用するのが前提です。

気になる副作用について、次項でご説明いたします。

(※1 参照:日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」
ミノキシジルについては、こちらの記事も詳しく書かれています。併せてご覧ください。
「「ミノキシジルって何?」発毛効果、副作用、購入、使用方法などの基本情報を集めました」

ミノキシジルの子作りへの影響の話の前に/ミノキシジルの副作用について

さて、ミノキシジルにはどのような副作用があるのでしょうか。 「塗りミノ(外用薬)」について、日本皮膚科学会のガイドラインは「有害事象」として、

  • 瘙痒(そうよう)
  • 紅斑(こうはん)
  • 落屑(らくせつ)
  • 毛包炎
  • 接触皮膚炎
  • 顔面の多毛

などを挙げています。

「瘙痒」とはかゆみのこと、「紅斑」は皮膚が赤くなること、「落屑」とはフケが出ることです。そのほかに、頭痛、めまい、胸の痛み、心拍数増加、手足のむくみ、原因不明の急激な体重増加なども報告されていますが、発現率は低いようです。

一方、内服ミノキシジルの副作用としては、全身の多毛、血圧低下、めまい、動悸、ふらつき、手足のむくみ、その他、降圧剤の作用と思われる全身症状が主です。

循環器系の既往症や、加療中の疾患のある人は、必ず医師に相談するようにしましょう。

ミノキシジル使用中の男性の子作りへの影響(副作用)について

さて、一般的に薬の服用による子作りへの影響について、3つの視点から考えてみましょう。

ミノキシジルの子作りへの影響(1)性行為

1つは、性行為への影響、2つめは精子や受精率への影響、そして3つめが、胎児や生まれてくる赤ちゃんへの影響です。

まず、性行為への影響について。

ある種の薬は、投与することによって性欲(リビドー)の減退や、勃起障害(ED)などを引き起こす場合がります。つまり、薬の影響でセックス行為がうまくできなくなることです。しかし、ミノキシジルには性欲(リビドー)の減退や勃起障害(ED)などの性機能低下に関する医学的な根拠は存在しません。

ミノキシジルの子作りへの影響(2)精子

次は精子への影響について考えてみましょう。
男性不妊の原因の90%造精機能障害、つまり、精子を作り出す機能に問題があるためといわれます。一般的に、一度の射精で1億〜数億の精子が射精されますが、その99%は子宮にたどり着く前に死滅します。そこから卵子の周囲までたどり着けるのは、さらにその100分の1程度。無事に受精できる精子はとても元気なものだけで、どこかに異常があるとか、元気のない精子は淘汰されています。

さて、妊活(子作り)中の夫婦にとっては、男性の精子の運動性が高く、元気で、射精される量も充分であるかどうかは重要な問題です。したがってAGA治療薬の影響で、精子の量が減少するとか、なんらかの異常が起きると受精率低下につながりかねません。しかし、ミノキシジル使用による造精機能への影響の報告はないため、この点でも心配はないでしょう。

ミノキシジルの子作りへの影響(3)胎児や生まれてくる赤ちゃん

最後に胎児や生まれてくる赤ちゃんへの影響について考えてみましょう。
前述のように受精できる精子は元気なものだけ。したがって、男性が使用した薬の影響で精子になんらかの異常が起きたとしても、その精子が受精する可能性はとても低いといわれます。仮に受精した場合でも、妊娠4週間未満では、薬剤の影響を受けた受精卵は着床しないか、流産するか、あるいは完全に修復されるため、催奇形性などが報告されている一部の薬剤以外は心配する必要はありません。

そのため子作り(妊活)中の男性がミノキシジルを使用しても、問題はありません。

子作り(妊活)中の女性や、妊娠中や授乳期の女性はミノキシジルを使用しない方がよい

前述の通り、子作り(妊活)中の男性のミノキシジル使用は、なにも問題はありません。安心してAGA治療のために、ミノキシジル使用を続けましょう。

しかし、女性の場合は注意が必要です。

ミノキシジル外用(塗り薬)は男性のAGAだけでなく、女性のAGA(FAGA:女性男性型脱毛症)の治療にも効果があり、前述の日本皮膚科学会のガイドラインでも、「推奨度A」評価を受けています。

ミノキシジル外用薬は妊婦や妊娠していると思われる人に注意が必要

市販されているミノキシジル外用薬(塗り薬)の「副作用」の項目には、妊婦や胎児に直接影響するような症状の記載はありません。しかし、「使用上の注意」では、妊娠中の使用については、その安全性が充分に確認されていないとなっています。したがって、妊婦や妊娠していると思われる人への使用は注意が必要です。

ミノキシジル外用薬は受信乳中の女性も注意が必要

また、授乳中の女性がミノキシジル外用(塗り薬)を使用した場合、母乳中にミノキシジルが移行することがわかっています。つまりお母さんがミノキシジルを使用すると、赤ちゃんは母乳を通じてミノキシジル成分を摂取することになるのです。

したがって、授乳中の女性は、ミノキシジル外用(塗り薬)を使用すべきではないでしょう。

前述の通り日本では内服薬のミノキシジルは製造されていませんが、米国で製造・販売されている内服ミノキシジル製剤の添付文書には、「妊娠中や避妊を受けていない妊娠の可能性のある女性にはお勧めできない」と明記されています。

子作り(妊活)中の女性と授乳中の女性は、内服ミノキシジル(飲み薬)を使用すべきではありません。

子作り(妊活)中の夫婦にとってミノキシジル以上に注意が必要な育毛剤フィナステリド

日本皮膚科学会のガイドラインで、ミノキシジル以外にAGA治療「推奨度A」評価のものに「フィナステリドの内服」もあります。「プロペシア」という商品名を耳にされた方も多いと思いますが、これがフィナステリドを主成分とする医薬品の商品名(MSD株式会社)です。

AGA(男性型脱毛症)のメカニズム

AGA(男性型脱毛症)には、男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)が大きく関わっているといわれています。DHTは、テストステロンという男性ホルモンが、「5αリダクターゼ」という酵素と反応して産生されます。フィナステリドは5αリダクターゼの作用を阻害することで、DHTによる脱毛作用を抑止するのです。

フィナステリドの副作用について

さて、このフィナステリドは、その副作用として、リビドー減退や、勃起機能不全、射精障害、精液量減少などが報告されています。

また、妊娠中の女性に投与した場合、男児胎児の生殖器官などの正常発育に影響をおよぼす可能性があるとして、妊婦や妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性の服用は「禁忌」となっています。そもそも、フィナステリドは男性ホルモンに強く作用するため、女性への投与は適応外となっています。

さらに、女性自身が服用しなくても、割れた錠剤を女性が手で触ることにも注意する必要があります。

したがって、子作り(妊活)中の夫婦の場合、フィナステリドの使用には細心の注意が必要です。

子作り(妊活)も諦めず、AGA(男性型脱毛症)治療も諦めないためにも、AGA(男性型脱毛症)治療の専門クリニックなどで医師と相談しながら、夫婦で協力することが大切ですね。

【まとめ】

日本のOTC医薬品の中で唯一発毛効果が承認されている塗り薬・ミノキシジル、その正しい使用法とその効果について、ご理解いただけたでしょうか。子作りに真剣に向き合うためにも、AGA(男性型脱毛症)治療薬の正しい使い方を夫婦で知ることが大切ですね。

薬は正しく使ってこそ、期待される効果が得られるものです。焦らず、慌てず、ミノキシジルと末永くつきあっていきましょう。

この記事の監修 アンファー株式会社

○事業内容
化粧品・サプリメント・健康食品・専門医師監修によるクリニック専売品などのオリジナルエイジングケアプロダクツの研究開発及び製造・販売・卸業務。

○研究開発・製造
エイジングケア分野のNPO法人・研究団体の活動を支援するとともに、専門医師・大学機関との共同研究を通じ、研究・開発を進め商品を製造。